【春の海】 春の海である。ひねもすのたりのたりである。海面に陽光がキラキラと輝く。その海を一隻の漁船がゆっくり波にのりながら進む。その中の数人の釣り客。思い思いののどけさである。 一転、春の嵐。あわてふためく釣り客に、漁船が大声をあげる。 「船にのったらみんな親兄弟じゃ。一蓮托生、あわてなさんな」 船は、激しく上下しながら、進む。 日本のこの国、この日本丸は、長く続いたナギののどけさから、一転、嵐に包まれて来た。空は暗い。海は白い。激しいゆれ。遠望もきかぬ。だから不安になり、船頭もまた、慌てる人々に舌うちをする。だから船の中はますます混乱する。 船に乗ったら一蓮托生。みんな日本人。この日本丸からは逃げ出せないのである。自分も飛び降りられないし、他人を突き落とすことも許されない。みんな親兄弟じゃ。ならば、嵐にも船を進める道はあるはず。 そう信じ、そう観念して、ひたすらに心を寄せ合い知恵を集め合いたい。 08:00 コメント(0) [コメントを書く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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