【池の音】 冷えた大地がぬくもって、池の水もぬくもって、そこはかとなくかげろうがたちのぼる。 若葉の香りにつつまれた池の端に立てば、水面はシンと静まりかえり、遠くの空でひばりの声。 その池に人がきて石を投げ込む。大きな石はドボン。小さな石はパチャン。その音に耳をすまして人は去る。 ドボンときいて去る人。パチャンときいて去る人。ツツツと水面を走って、音もなく沈む石に、静かに立ち去る人もいる。音なき音をきいたのか。 ピチャン、ドボン、バチャン、ポトンさまざまな石にさまざまな音。それぞれの音にそれぞれの人が、何がしかの感懐をおぼえつつ、立ち去ってゆく。 あとはまた、もとの静けさ。大小さまざまな石をのみこんで、大小さまざまな音をのこして、その音から生まれる感懐は人それぞれにまかせて、池はまた静かに若葉を映す。 慌ただしいこの世の中ではあるけれど、時には池の端にたたずみ、池の音をきいてみたい。 06:00 コメント(0) [コメントを書く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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