【鈴をふる】 チリーン、チリーン。どこかで誰かが鈴をふっている。 夏の終わりの夜のひととき。うちわを片手に星空を仰げば、蚊取り線香のほのかな揺らめきの中で、どこからか、かすかに鈴の音がきこえてくる。チリーン、チリーン。 それは、忍び寄る秋の気配に、早くも鳴き始めた虫の声ではない。何のためかは知らないが、たしかに誰かが、鈴をふっているのである。 鈴をふりながら、その人は何を思い出しているのであろう。長い人生、様々な事があって、様々な思いが入り乱れて、その入り乱れた思いの中で、時に激してくる我が心を、鈴の音にひたすら打ち静めているのであろうか。 チリーン、チリーン。心に染み通る様なその響きは、あれこれに捉われつつ過ごしてきた我が心を、次第に素直に洗い清めてくれる。そして、小さな是非善悪で明け暮れてきた日々が清められ、人間としての深く大きく広やかな道がひらけてくる。 次第に遠ざかりゆく鈴の音。誰がふっているのか。あるいは自分がふっているのか。―― 02:00 コメント(0) [コメントを書く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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